子供を1人しか産まない女性は自分勝手なのか(前編)

日常生活での経験

ある女性との会話

おばあちゃん
おばあちゃん

あなた、お子さんは何人なの?

あき
あき

うちは1人ですね。

おばあちゃん
おばあちゃん

次の子供はいつなの?兄弟は作らないの?

あき
あき

いやー、もう産む予定はないんですよ~。

おばあちゃん
おばあちゃん

なんでなの?

あき
あき

1人産むだけで大変だったんで、もういいかなと思いまして。

おばあちゃん
おばあちゃん

なにそれ!わがまま!子供が可哀想!

あき
あき

やっぱりそうですかねぇ。昔は産めよ増やせよの時代でしたもんねぇ。

5年位前の、超高齢女性の患者さんとの会話です。

この会話、当時の私にかなり刺さりました。

傷ついたとか悲しくなったとか腹が立ったとかではなく、素直に「そうかもしれない。」と受け取りました。「時代が違うんだよ。」と思いつつ「本当にただのわがままなのかもしれない。」と。

この女性の若い頃と比べ、今の合計特殊出生率は低下しています(2020年は1.33)。

数字上、子供が1人という女性が日本中にいることは明らかであって、決して私だけが特別にわがままなわけではないと、理屈では理解していました。

でもずっと、子供を1人しか産んでいないという事実に、なんだか引け目を感じていました。

引け目を感じる理由

日本をはじめ「先進国」と呼ばれる国々で、少子化が進んでいることは周知の事実です。

2人以上の子供を持たないという選択をしている夫婦(カップル)が、世界中にわんさかいる中で、私だけが批判される理由はないし、自分の選択に引け目を感じる必要もないはず。

でもなんだか落ち着かない。

これについて自分を考察したところ、いくつか理由が考えられました。

自分の周りが多産

私が所属するリハビリテーション部で出産経験があるスタッフは、女性全体の30%弱です。

そのうちの30%強が3人出産。4人目も欲しいと言っているスタッフも。

2人目以上を考えていない女性は、私を含めて2名のみ。

2023年度の合計特殊出生率が1.20だったことを考えると、この状況は驚異的。

子供を1人しか産んでいない女性は、当院では圧倒的少数派なのです。

少数派だから間違っているとかではないですが、「なんか肩身が狭い感じ」。

これがひとつ目の「引け目」の理由。

政府が子供を増やせと言っている

少子化は国の根幹を揺るがすものですので、日本政府は「こども家庭庁」を創設し、再び「産めよ増やせよ」と言っています。

それは十分に理解しています。特にそれなりのキャリアを重ねている医療従事者であれば、将来的(というか現在進行形)に少子高齢化が医療・介護・福祉領域にどれだけ影響を及ぼすかなんてこと、重々承知しています。

国は大々的にヤバイと言っていて、それが自分の職域にも波及するという事実は知っている。

でも私は産みたくない。

これが2つ目の「引け目」の理由。

金銭的に困窮しているわけではない

これは2つ目と関連するもの。

世間で一般的に言われている少子化の要因のひとつに、出産や教育のコストがあります。

ChatGPTにまとめてもらうとこんな感じ。

1. 出産・育児にかかる直接費用の重さ  
 妊娠・出産時の医療費自己負担や、産後の育児用品購入など、最初のハードルが高いことが挙げられます。これが「子どもを1人持つ」決断を難しくしている要因の一つです。

2. 教育費の高騰
 幼稚園から大学までを公立で進めた場合でも約1,000万円、私立なら約2,500万円以上が必要とされ、子ども一人当たりの「質」向上に伴い費用負担が重くなる傾向があります。

3. 住宅取得・維持コストの増大
 都市部を中心に住宅価格や家賃が高騰し、「子育て世帯が住みやすい間取り・立地」を確保しづらい状況が続いています。将来の住宅ローン返済を不安視して、結婚や子づくりを先送りするケースが多いです。

4. 若年層の所得・雇用不安
 非正規雇用の拡大や賃金停滞で「結婚後も安定的に世帯を支えられるか」が見えにくく、経済的自信のなさが結婚・出産の意欲を削いでいます。

5. 出産後に女性の所得が落ち込む不安
 出産・育児による休業・離職で女性の労働所得が大きく減りがちで、次子以降の出産をためらわせる要因になっています。

日本政府もそのように考えており、対策を講じています。

ただ我が家の場合、これは当てはまりません。

本当は2人目が欲しいけど、金銭面を考えて泣く泣く諦めている、というわけではありません。

「資金繰りが厳しそうだから産めない。」は、なんだか正当性があるような気がしますが、私の場合は「産みたくない。」

これが3つ目の「引け目」の理由。

行動制限が苦痛

娘の出産前、私は流産を2回経験しています。

また娘も妊娠当初は双子で、途中で1人が流れてしまいました。

いずれの妊娠期間も、つわりは辛かったです。

とはいえ、妊娠につわりはつきものだし、流産だって珍しくはない。

世の中の女性は、これに耐えて出産している。

大変ではあったけれど、実際に私も出産できたわけで、身体機能的に子供を産めない体ではないということは証明されている。

とはいえ、私はもう産みたくない。

つわりが辛かったのはもちろんですが、流産がかなりしんどかった。

流産は珍しいことではないのですが、個人の体験としては「珍しいも珍しくないも関係あるか!」ですよ。

2人目を考えた時、また流産する可能性を考えると、どうしても二の足を踏んでしまいます。

また流産と同程度、あるいはそれ以上に、妊娠期間中に自身の行動がとんでもなく制限されることが苦痛で苦痛でしょうがなかった。

妊婦が自由気ままに、何も気にせずに生活できるはずがないのは当然ですが、これは私には受け入れがたいことでした。

産めない体ではないくせに、当たり前のことを受け入れられなくて「産みたくない。」

これが4つ目の「引け目」の理由。

まとめ

ここまでダラダラと4つの理由を挙げましたが、大きくまとめると・・・

これまでの世の中の動きと今の潮流に反し、個人的な感情で出産を放棄している

というのが「引け目」の原因です。

これはまさに「わがまま」・「自分勝手」であって、好ましい状態とは言えないのではないかと。

つい最近まで、私はこの考えが頭から離れませんでした。

みなさんは、どう思われるでしょうか。

今現在、私の考えは変わりつつあり、あまり引け目は感じなくなってきました。

ハンス・ロスリング著『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』を読んだからです。

後半では、なぜ『FACT FULNESS(ファクトフルネス)』で考えが変わったのかについて触れようと思います。

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